はじめに

みなさん、こんにちは。いつもブログを購読いただきありがとうございます。

近年、生成AIの進化は目覚ましく、システム開発の様々な工程に活用できるようになってきました。本ブログでは、システムエンジニアの皆様が日々の業務効率化を図るために、生成AIをどのように活用できるのか、具体的な活用事例をご紹介していきます。今回は、システム開発の中でも特に工数見積もりに焦点を当て、生成AIがどのように作業を効率化し、精度向上に貢献できるのかを解説します。
システムエンジニアの皆さん、日々の業務に追われ、工数見積もりに多くの時間を費やしているのではないでしょうか？
SEとして長年培ってきた経験と、最新の生成AI技術を組み合わせることで、皆さんの負担軽減に繋がる情報を提供できればと考えています。

工数見積もりでの生成AI活用タスクの洗い出しと工数見積もり

生成AIに、要件定義書や設計書などのドキュメントを読み込ませることで、タスクを自動的に洗い出すことができます。
さらに、過去のプロジェクトデータや類似プロジェクトの情報と組み合わせることで、各タスクに必要な工数を予測し、見積もりを作成できます。
AIが類似プロジェクトのデータから工数を予測する精度を高めるために、プロジェクト管理ツールとの連携も有効です。

プロンプト例

## プロジェクト: ECサイト構築

## 要件定義書:
* 顧客は商品を閲覧・検索・購入できる。
* 顧客は会員登録・ログインできる。
* 管理者は商品情報・顧客情報を管理できる。
* システムは24時間365日稼働する必要がある。
* セキュリティ対策は万全である必要がある。

## 設計書:
* 開発言語: Java
* データベース: MySQL
* フレームワーク: Spring Boot
* インフラ: AWS

## 過去のプロジェクトデータ:
* 類似ECサイト構築プロジェクトA: 開発期間 3ヶ月, 工数 120人日
* 類似ECサイト構築プロジェクトB: 開発期間 2ヶ月, 工数 80人日

## タスク洗い出しと工数見積もりを生成してください。

プロンプト解説

上記のプロンプト例では、ECサイト構築プロジェクトを例に、要件定義書、設計書、過去のプロジェクトデータを入力として与えています。
これらの情報に基づいて、生成AIはタスク洗い出しと工数見積もりを生成します。
例えば、以下のようなタスクと工数が生成されると想定できます。

顧客向け機能開発
- 商品閲覧機能: 10人日
- 商品検索機能: 15人日
- 商品購入機能: 20人日
- 会員登録機能: 5人日
- ログイン機能: 5人日
管理者向け機能開発
- 商品情報管理機能: 15人日
- 顧客情報管理機能: 10人日
インフラ構築: 20人日
セキュリティ対策: 10人日
テスト: 10人日

より精度の高いタスク洗い出しと工数見積もりを行うためには、入力データの質と量が重要です。
要件定義書や設計書の内容が具体的であればあるほど、生成AIは正確なタスクを洗い出すことができます。
また、過去のプロジェクトデータが多いほど、工数予測の精度も向上します。

開発に必要なリソースの見積もり

生成AIに、タスクリストと各タスクに必要なスキルセットを入力することで、必要な人員数やスキルレベルを自動的に算出できます。

さらに、市場の平均的なエンジニアの単価情報などを加味することで、人件費の見積もりも自動化できます。

ただし、AIが出力した見積もりはあくまで目安であり、最終的な判断は人間のSEが行う必要があります。

プロンプト例

## プロジェクト: ECサイト構築

## タスクリスト:
* 顧客向け機能開発


* 商品閲覧機能: 10人日


* 商品検索機能: 15人日


* 商品購入機能: 20人日


* 会員登録機能: 5人日


* ログイン機能: 5人日
* 管理者向け機能開発


* 商品情報管理機能: 15人日


* 顧客情報管理機能: 10人日
* インフラ構築: 20人日
* セキュリティ対策: 10人日
* テスト: 10人日

## 各タスクに必要なスキルセット:
* 顧客向け機能開発: Java, Spring Boot, フロントエンド開発スキル
* 管理者向け機能開発: Java, Spring Boot, データベース設計スキル
* インフラ構築: AWS, Linux, ネットワーク構築スキル
* セキュリティ対策: セキュリティに関する専門知識、脆弱性診断スキル
* テスト: テスト設計スキル、テスト自動化スキル

## 市場における平均的なエンジニア単価:
* Javaエンジニア: 8万円/人日
* フロントエンドエンジニア: 7万円/人日
* AWSエンジニア: 10万円/人日
* セキュリティエンジニア: 12万円/人日
* テストエンジニア: 6万円/人日


## 開発に必要なリソースとその人件費を見積もってください。

プロンプト解説

上記のプロンプト例では、ECサイト構築プロジェクトを例に、タスクリスト、各タスクに必要なスキルセット、市場における平均的なエンジニア単価を入力として与えています。

これらの情報に基づいて、生成AIは開発に必要なリソースとその人件費を見積もります。

例えば、以下のようなリソースと人件費が生成されると想定できます。

Javaエンジニア: 2名 (顧客向け機能開発、管理者向け機能開発)
フロントエンドエンジニア: 1名 (顧客向け機能開発)
AWSエンジニア: 1名 (インフラ構築)
セキュリティエンジニア: 1名 (セキュリティ対策)
テストエンジニア: 1名 (テスト)
人件費
- Javaエンジニア: 160万円 (8万円/人日 × 2名 × 10人日)
- フロントエンドエンジニア: 70万円 (7万円/人日 × 1名 × 10人日)
- AWSエンジニア: 200万円 (10万円/人日 × 1名 × 20人日)
- セキュリティエンジニア: 120万円 (12万円/人日 × 1名 × 10人日)
- テストエンジニア: 60万円 (6万円/人日 × 1名 × 10人日)

より精度の高いリソース見積もりと人件費見積もりを行うためには、入力データの質と量が重要です。

タスクリストが詳細であればあるほど、必要なスキルセットを正確に特定できます。

また、市場における平均的なエンジニア単価の情報が最新であればあるほど、人件費見積もりの精度も向上します。

作業工数のリスク分析

生成AIは、過去のプロジェクトデータや市場のトレンド、技術的な難易度などを分析することで、工数見積もりのリスク要因を特定し、その影響度を評価することができます。

例えば、特定の技術に依存したタスクのリスク、未経験の技術を使用するリスクなどを分析し、バッファ時間の見積もり精度向上に貢献できます。

プロンプト例

## プロジェクト: ECサイト構築

## タスクリスト:
* 顧客向け機能開発


* 商品閲覧機能: 10人日


* 商品検索機能: 15人日


* 商品購入機能: 20人日


* 会員登録機能: 5人日


* ログイン機能: 5人日
* 管理者向け機能開発


* 商品情報管理機能: 15人日


* 顧客情報管理機能: 10人日
* インフラ構築: 20人日
* セキュリティ対策: 10人日
* テスト: 10人日

## 各タスクに必要なスキルセット:
* 顧客向け機能開発: Java, Spring Boot, フロントエンド開発スキル
* 管理者向け機能開発: Java, Spring Boot, データベース設計スキル
* インフラ構築: AWS, Linux, ネットワーク構築スキル
* セキュリティ対策: セキュリティに関する専門知識、脆弱性診断スキル
* テスト: テスト設計スキル、テスト自動化スキル

## 過去のプロジェクトデータ:
* 類似ECサイト構築プロジェクトA: 開発期間 3ヶ月, 工数 120人日, 問題発生回数 5回, 主な問題: セキュリティ対策の遅延
* 類似ECサイト構築プロジェクトB: 開発期間 2ヶ月, 工数 80人日, 問題発生回数 2回, 主な問題: インフラ構築の遅延


## 各タスクにおけるリスク要因とその影響度を分析してください。

プロンプト解説

上記のプロンプト例では、ECサイト構築プロジェクトを例に、タスクリスト、各タスクに必要なスキルセット、過去のプロジェクトデータを入力として与えています。

これらの情報に基づいて、生成AIは各タスクにおけるリスク要因とその影響度を分析します。

例えば、以下のようなリスク要因と影響度が生成されると想定できます。

セキュリティ対策: 専門知識を持つ人材不足、最新の脆弱性への対応遅れのリスクが高い。
影響度: 大
インフラ構築: AWSの障害発生、ネットワークの不安定化などのリスクが中程度。
影響度: 中
顧客向け機能開発: 新機能の開発に伴う不具合発生リスクが低い。
影響度: 小

より精度の高いリスク分析を行うためには、入力データの質と量が重要です。

過去のプロジェクトデータには、問題発生回数やその内容だけでなく、対応にかかった時間や費用などの情報も含まれていると、より精度の高い分析が可能になります。

また、市場のトレンドや技術的な難易度に関する情報は、外部データベースや専門家の知見を活用することで補完できます。

見積もりレポートの作成

生成AIに、工数見積もりの結果を分かりやすくまとめたレポートを自動作成できます。

タスク毎の工数、合計工数、リスク要因とその影響度などを含んだ、フォーマットされたレポートを生成することで、見積もり作業の効率化と、クライアントへの説明資料の作成を効率化できます。

必要に応じて、図表なども自動生成させることができます。

プロンプト例

## プロジェクト: ECサイト構築

## タスクリストと工数:
* 顧客向け機能開発: 50人日
* 管理者向け機能開発: 25人日
* インフラ構築: 20人日
* セキュリティ対策: 10人日
* テスト: 10人日
* 合計: 115人日

## リスク要因とその影響度:
* セキュリティ対策: 専門知識を持つ人材不足、最新の脆弱性への対応遅れのリスクが高い。(影響度: 大)
* インフラ構築: AWSの障害発生、ネットワークの不安定化などのリスクが中程度。(影響度: 中)
* 顧客向け機能開発: 新機能の開発に伴う不具合発生リスクが低い。(影響度: 小)


## 見積もりレポートを作成してください。
レポートには、プロジェクトの概要、タスクリストと工数、リスク要因とその影響度、合計工数、開発期間などを含めてください。
図表なども適宜使用してください。

プロンプト解説

上記のプロンプト例では、ECサイト構築プロジェクトを例に、タスクリストと工数、リスク要因とその影響度を入力として与えています。

これらの情報に基づいて、生成AIは見積もりレポートを作成します。

例えば、以下のような内容を含むレポートが生成されると想定できます。

プロジェクト概要: ECサイト構築プロジェクト

タスクリストと工数:

タスク工数(人日)顧客向け機能開発50管理者向け機能開発25インフラ構築20セキュリティ対策10テスト10合計115

リスク要因とその影響度:

リスク要因影響度セキュリティ対策: 専門知識を持つ人材不足、最新の脆弱性への対応遅れ大インフラ構築: AWSの障害発生、ネットワークの不安定化中顧客向け機能開発: 新機能の開発に伴う不具合発生小

開発期間: 約3ヶ月

その他: 上記の見積もりは、現時点での情報に基づいて算出されたものであり、今後変更される可能性があります。

より詳細なレポートを作成するためには、入力データにさらに情報を追加する必要があります。

例えば、各タスクの開始日と終了日、担当者、必要なスキルセットなどを追加することで、より詳細なレポートを生成できます。

また、レポートのフォーマットを指定することも可能です。

見積もり精度の検証

生成AIを用いて作成した見積もりと、過去の類似プロジェクトの実績を比較することで、AIによる見積もりの精度を検証することができます。

この検証結果を基に、AIモデルの精度向上にフィードバックし、将来の見積もり精度の向上につなげることができます。

精度の検証には、統計的な手法を用いることが有効です。

プロンプト例

## プロジェクト: ECサイト構築

## 生成AIによる見積もり:
* 合計工数: 115人日

## 過去の類似プロジェクトの実績:
* 類似プロジェクトA: 実績工数 120人日
* 類似プロジェクトB: 実績工数 80人日


## 生成AIによる見積もりの精度を検証してください。
過去の類似プロジェクトの実績と比較し、精度を数値的に示してください。
また、精度向上のための改善点を提案してください。

プロンプト解説

上記のプロンプト例では、ECサイト構築プロジェクトを例に、生成AIによる見積もりと過去の類似プロジェクトの実績を入力として与えています。

これらの情報に基づいて、生成AIは見積もりの精度を検証します。

例えば、以下のような検証結果と改善点が生成されると想定できます。

精度検証結果:

類似プロジェクトAとの比較:
誤差率 = (|115 - 120| / 120) * 100% = 4.17%
類似プロジェクトBとの比較:
誤差率 = (|115 - 80| / 80) * 100% = 43.75%

平均誤差率 = (4.17% + 43.75%) / 2 = 23.96%

改善点:

過去のプロジェクトデータの量を増やす。
プロジェクトの規模や難易度を考慮した重み付けを行う。
最新の技術トレンドや市場動向を反映させる。

より精度の高い検証を行うためには、入力データにさらに情報を追加する必要があります。

例えば、各タスクの実績工数や、プロジェクトの規模、難易度などを追加することで、より詳細な検証が可能になります。

また、統計的な手法を用いて、より客観的な評価を行うことも有効です。

まとめ

工数見積もりの工程において、生成AIの活用はシステムエンジニアにとって大きなメリットをもたらします。タスクの洗い出しから工数予測、リソースの見積もり、リスクの分析、さらには見積もりレポートの作成まで、一連のプロセスを効率化することが可能です。

具体的には、生成AIを用いることで要件定義書や設計書から自動的にタスクを洗い出し、それに基づいた工数の予測も行えるため、手動による見積もりに比べて精度が向上し、時間の節約にも繋がります。また、過去のプロジェクトデータを活用することで、より正確な見積もりが実現可能です。

加えて、AIによるリスク分析を通じて見積もりのリスク要因を特定することで、プロジェクト全体の健全性を高めることができます。そして、生成AIはクライアントへのプレゼン資料を自動作成する機能も持っているため、エンジニアはより戦略的な業務に集中できるようになります。

今後、システムエンジニアの皆様には是非とも生成AIの活用を検討していただき、効率的かつ精度の高い工数見積もりを実現していただければ幸いです。

根津 知則

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